- 社労士試験はどれくらい勉強したら合格できる?
- 不合格だったら翌年の学習は何時間は?
- 時間を短縮できる方法が知りたい
社会保険労務士試験に合格するのに必要な勉強時間は、800〜1,000時間といわれています。ところが実際は、1,000時間以上学習しても合格できない方もいます。
この記事では学習を始める前に知っておくべき勉強時間の目安と、短縮する方法を解説。記事を読めば、働きながらでも十分合格を目指せます。
800~1,000時間というのは、知識ゼロから学習を始めて、合格レベルに到達するまでの勉強時間の目安です。
合格レベルに達したからといって、合格できると限らないのが社労士試験の難しいところです。
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社労士試験の合格に必要な勉強時間
初学者が社労士試験の勉強を始めて、合格レベルに到達するまでの学習期間と勉強時間の目安は次のとおりです。
- 学習期間:半年から1年間
- 勉強時間:800〜1,000時間
以下は、1日の勉強時間の目安になります。
総勉強時間 | 半年間 | 1年間 |
---|---|---|
800時間 | 4時間23分/日 | 2時間12分/日 |
1,000時間 | 5時間28分/日 | 2時間45分/日 |
半年の学習期間で合格を目指すと、1日4〜6時間の勉強が必要です。
働きながら合格を目指すなら、1年程度の学習期間を設定するのが現実的だとわかります。
1年計画なら1日2〜3時間の勉強で済みます。
合格者の7割は働きながら勉強
社労士試験の合格者の7割以上が、企業・団体に雇われている人です。以下は2023年試験の合格者の職業別割合になります。
- 会社員 58.8%
- 公務員 8.8%
- 団体職員 4.6%
会社員、公務員、団体職員を合計すると72.2%。社労士は働きながらの学習で、合格できる資格です。
他士業と勉強時間を比較
社労士試験の合格までに必要な勉強時間の目安を、隣接士業と比較したのが以下の表です。
資格名 | 勉強時間の目安 | 合格率 |
---|---|---|
弁護士(予備試験) | 6,000時間 | 3% |
司法書士 | 3,000時間 | 4〜5% |
税理士 | 3,000時間 | 15〜20% |
中小企業診断士 | 1,000〜1,500時間 | 4〜5% |
社会保険労務士 | 800〜1,000時間 | 6〜7% |
行政書士 | 600〜1,000時間 | 10〜13% |
宅地建物取引士 | 300〜500時間 | 15〜17% |
社労士の800〜1,000時間は宅地建物取引士よりは長く、中小企業診断士や行政書士と同レベルです。
社労士は弁護士・司法書士・税理士よりも、短い勉強時間で合格を目指せます。
800~1000時間はあくまでの目安
社労士試験に合格するための800〜1,000時間の勉強時間は、あくまで目安です。なかには、予備校を活用して500時間程度の学習で合格できる人もいます。
一方で1年間に1,500時間勉強したからといって、社労士試験に合格できるとは限りません。理由は、クリアしなければならない合格基準が多いからです。
社労士試験には大きく4つの合格基準があります。
- 選択式試験の総得点が基準点以上
- 選択式試験の各科目が3点以上
- 択一式試験の総得点が基準点以上
- 択一式試験の各科目が4点以上
4つの合格基準を細かく分類すると、合格基準は全部で17にも及びます。合格するには17の合格基準をすべて満たすことが必要です。
1,000時間勉強をすれば、たいていの方は合格レベルまで到達できます。
しかし、合格基準を1つでも下回ると不合格になるため、実力者でも努力が報われないことがあるのです。
合格率
社労士試験の合格率は6〜7%。2019〜2023年の直近5年間の傾向は以下のとおりです。
- 合格率:6.5%
- 受験者数:4万人弱
- 合格者数:2,500人前後
詳細はこちら >> 過去10年間の合格率
落ちたら勉強時間が追加で必要
社労士試験は800〜1,000時間勉強したら、終わりではありません。試験に落ちてしまったら、次の年も学習が不可欠です。
以下は資格スクールのTACが、2017〜2022年に合格した受講生505名から回答を得たアンケート結果。合格までの受験回数です。
受験回数 | 割合 |
---|---|
1回 | 26% |
2回 | 26% |
3回 | 18% |
4回 | 12% |
5回 | 8% |
6回以上 | 10% |
合計 | 100% |
TAC社労士講座の合格者の中でも、1回で合格しているのは26%です。10人中7〜8人は、合格までに2回以上の受験しています。
社労士試験は覚える量が膨大です。しかも受験のチャンスは1年に1回。
不合格になると知識を維持するために、さらに800〜1,000時間の勉強が必要になる場合があります。
最強の勉強時間の短縮は、少ない受験回数で合格することです。
やる気を保つコツはこちら >> モチベーションを維持する方法7選
試験範囲
社労士試験の学習対象は全部で10科目。出題される可能性がある法律は30以上です。市販のテキストのページ数が1,000ページを越えていることも珍しくありません。
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社労士試験の勉強時間を短縮できる7つ方法
勉強時間を短縮する方法は次の7つです。クリックすると各項目にジャンプします。
理解する
社労士試験の勉強時間を短縮するために、理解を心がけましょう。丸暗記をしようとするのは効率が悪いです。
例えば勉強する科目の一つ「労働基準法」では、以下についてメインで学びます。
- 賃金
- 解雇
- 労働契約
- 就業規則
- 年次有給休暇
- 労働時間・休憩・休日
細かい規定を覚える前に、次の考え方を理解しておきましょう。
労働基準法の根幹
強い立場の使用者に規制をかけて、弱い立場の労働者を保護する
根幹を理解していれば、賃金や解雇の規定も以下のようにスムーズに頭に入ります。
「労働基準法は労働者を保護するために、賃金や解雇の規定を設けている」
社労士試験は「法律の試験」です。法律はすべて、目的があって作られています。
法律や政令、省令が存在する目的を理解すると、知識がすぐに定着します。
基本を完璧にする
社労士試験で問われる内容は、基本事項が70%程度を占めています。細かい基準を除けば、合格ラインの目安は7割の得点です。
基本を完璧にすれば、効率よく合格レベルに到達できるわけです。
テキストを読んだり講義を視聴したりして、以下の手順で基礎固めをします。
- 試験の全体像をつかむ
- 各科目の全体像と特徴を知る
- 各法律の目的条文を理解する
- よく出題されている箇所から覚える
幹を作った上で、枝葉を加えていくイメージです。基本ができていれば、ラクに知識をプラスできます。
基本を極めると応用が効くため、学習時間の短縮につながります。
目的条文
各法律の1条に定められた条文。法律の原則や趣旨、どんな目的で作られたのかが書かれています。社労士試験では頻出事項であり、最重要ポイントです。
学習の基本はこちら >> 最短合格できる勉強方法
過去問を中心に学習する
社労士試験で過去に出題された問題(過去問)を中心に学習を進めましょう。理由は2つあります。
- 問題を解くのに慣れる
- 再度出題される可能性が高い
学校のテストと同じです。教科書だけを読んでいても、テストの得点は伸びません。
試験の本番で得点するために過去問を繰り返し解いて、正解の導き出し方を覚える必要があります。
社労士試験の問題は過去問を参考に、大学教授などの試験委員が作成。類似している問題が何度も出題されています。
過去問をマスターするだけで、試験に合格するのは困難です。しかし、過去問の攻略が合格への最短ルートなのは間違いありません。
過去問の演習以外に必要な対策
社労士試験に合格するには、過去問の反復練習以外に次の対策が必要です。
- 労働統計
- 法律の改正(法改正)
- 厚生労働白書などの白書
白書や法改正は範囲が広く予想が難しいため、資格スクールなどの専門教材を活用するのが一般的です。
詳細はこちら >> 法改正と白書を得点源にする方法
よく出るポイントに絞る
過去によく出題されている論点に絞って学習しましょう。
過去問を解いていくうちに、繰り返し出題されている論点がわかるようになります。以下の項目は毎年のように出題されています。
- 労働基準法(労基)
- 総則、労働契約、賃金、労働時間・休憩・休日、年次有給休暇、就業規則
詳しくはこちら >> 労働基準法を攻略する方法 - 労働安全衛生法(安衛)
- 総則等、安全衛生管理体制、安全衛生教育等
詳しくはこちら >> 労働安全衛生法の省エネ攻略法 - 労働者災害補償保険法(労災)
- 業務災害等の認定、業務災害に関する保険給付、通則、特別加入
詳しくはこちら >> 労災保険法を得点源にする方法 - 雇用保険法(雇用)
- 総則・通則、基本手当、不服申立て及び訴訟等
詳しくはこちら >> 雇用保険法をマスターする方法 - 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収)
- 保険関係の一括、労働保険料、労働保険料の申告・納付、徴収金・督促及び滞納処分等
詳しくはこちら >> 労働保険徴収法の攻略方法 - 労務管理その他労働に関する一般常識(労一)
- 労働契約法、社会保険労務士法、障害者雇用促進法、労働組合法、労働関係調整法、労働経済等
詳しくはこちら >> 労一で足切りにあうリスクを下げる勉強法 - 健康保険法(健保)
- 総則、保険者、被保険者、被扶養者、標準報酬月額・標準賞与額、届出等、保険者の行う事業、保険外併用療養費、療養費、傷病手当金、資格喪失後の保険給付、通則、日雇特例被保険者、費用の負担、不服申立てその他
詳しくはこちら >> 8割得点したい健康保険法を攻略する方法 - 国民年金法(国年)
- 被保険者、給付の通則、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、その他給付、費用、不服申立て及び雑則、国民年金基金
詳しくはこちら >> 得点を取りにいく国民年金法の攻略法 - 厚生年金保険法(厚年)
- 被保険者、標準報酬月額・標準賞与額、保険給付の通則、老齢厚生年金、障害厚生年金及び障害手当金、遺族厚生年金、費用
詳しくはこちら >> 守りの厚生年金保険法で5、6点を確保する方法 - 社会保険に関する一般常識(社一)
- 介護保険法、船員保険法、児童手当法、確定給付企業年金法、確定拠出年金法、法令に関する総合問題、白書等
詳しくはこちら >> もっとも救済が多い社一を攻略する勉強法
頻出の規定から覚えていくことで、効率よく得点アップができます。
よく出るポイントに絞って学習し、勉強時間の短縮を図りましょう。
覚え方はこちら >> すぐに実践できる暗記方法10選
科目ごとにメリハリをつける
科目ごとの学習時間にメリハリをつけましょう。社労士試験では科目ごとに配点が異なるからです。
以下は科目ごとの配点です。
試験科目 | 総配点 | 配点の内訳 |
---|---|---|
労基 | 10点 | 選択式試験3点 択一式試験7点 |
安衛 | 5点 | 選択式試験2点 択一式試験3点 |
労災 | 12点 | 選択式試験5点 択一式試験7点 |
雇用 | 12点 | 選択式試験5点 択一式試験7点 |
徴収 | 6点 | 選択式試験0点 択一式試験6点 |
労一 | 10点 | 選択式試験5点 択一式試験5点 |
健保 | 15点 | 選択式試験5点 択一式試験10点 |
国年 | 15点 | 選択式試験5点 択一式試験10点 |
厚年 | 15点 | 選択式試験5点 択一式試験10点 |
社一 | 10点 | 選択式試験5点 択一式試験5点 |
合計 | 110点 | 選択式試験40点 択一式試験70点 |
配点が、もっとも高い科目は15点。低い科目は5点です。
満点でも5点の安衛よりも、15点を狙える健保・国年・厚年の3科目に、時間をかけたほうがコスパが良いのは明らかです。
配点を意識して勉強時間を按分すれば、効果的に得点を伸ばすことができます。
選択式試験と択一式試験
社労士試験は「選択式試験」と「択一式試験」の2種類。どちらもマークシート形式です。1日で2つの試験を受けます。
- 選択式試験:5つの空欄に入る適切な語句を、与えられた20の選択肢の中から選ぶ
- 択一式試験:5つの選択肢の中から「正しいもの」または「誤っているもの」を1つ選ぶ、5肢択一
詳細はこちら >> 確実に合格基準点を超えるための勉強法
横断整理をして覚える
効率よく記憶をするために、横断整理を行いましょう。横断整理とは、知識を整理することです。
社労士試験の学習は「労働基準法」「労働安全衛生法」といった具合に、法律ごとに勉強を進めていきます。
一通り学習すると似たような規定がたくさん出てきて、頭の中が混乱することも。
紛らわしい箇所は科目を横断して、共通事項としてまとめて覚えるとラクです。横断整理のイメージは以下の通り。
項目 | 労基 | 徴収 | 健保・厚年 |
---|---|---|---|
臨時または3ヶ月を超える期間ごとに受ける賃金(報酬) | 賃金とする | 賃金総額に算入する | 報酬としない |
ボーナスなどの3ヶ月を超える期間ごとに受ける賃金(報酬)の扱いは、法律によって異なります。横断整理をすることで、違いを意識して記憶することがきます。
横断整理は少ない労力で、正確に覚えるための記憶術です。
横断整理のやり方
横断整理のやり方は2つです。
- 教材を購入する
- 自分で共通事項をまとめる
横断整理をするための教材は、資格スクールの講座はもちろんのこと、市販の書籍でも販売されています。
詳細はこちら >> 横断整理をすると覚えるのがラク
資格予備校を活用する
社労士試験の勉強時間を短縮するのに、もっとも効果があるのが資格予備校の活用です。
予備校の講座を利用すれば、これまでに挙げてきた6つの時間短縮法をすべて実践できる環境が整います。
- 理解する
- 基本を完璧にする
- 過去問を中心に勉強する
- よく出るポイントに絞る
- 科目ごとにメリハリをつける
- 横断整理をして覚える
講座で学習すると、合格できる可能性は格段に上がります。合格者の大半は、予備校を利用しているくらいです。
社労士の合格率は6~7%、いわば椅子取りゲームです。スタート時点でハンデを負わないように、講座の活用を検討しましょう。
私は独学と通信講座の両方を経験しました。肌感覚として講座を活用したほうが、2倍以上速く成長できます。
社労士試験の主な資格予備校
- 通学スタイル:TAC、資格の大原、LEC
- オンライン:フォーサイト、スタディング、クレアール、アガルートアカデミー、ユーキャン
通学のTAC・資格の大原・LECでも、オンラインで受講可能です。
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社労士試験の勉強時間を確保する3つのコツ
働きながら社労士試験の勉強時間を確保するコツを、3つご紹介します。
- ながら勉強をする
- スキマ時間を活用する
- 集中できる環境を作る
ながら勉強をする
社労士試験の学習時間を確保するために、「ながら勉強」をしましょう。何かをしながら勉強することです。
以下の時間に勉強するのがおすすめ。
- 食事
- お風呂
- 就寝前
- 朝の支度準備
- 移動中(徒歩、車、電車)
- 家事(掃除、料理、食器洗い、洗濯干し)
音声なら、たいていの「ながら時間」に勉強できます。資格スクールの講義を聞くことは、テキストを読むのと同等の学習効果が得られます。
積極的に「ながら勉強」を取り入れて、学習時間を積み上げましょう。
スキマ時間を活用する
忙しい社会人が社労士試験の勉強するためには、スキマ時間を活用しましょう。うまくいけば1日に1〜2時間のスキマ時間を、学習に充てることができます。
- 人を待っている時間
- 電車やバスの待ち時間
- アポイントとアポイントの間
1日1時間でも積み重なれば、1年で365時間。スキマ時間を活用できれば、まとまった勉強時間が取れなくても大丈夫です。
毎日のスケジュールが楽になります。
持ち運びやすい教材
スキマ時間に勉強するために、持ち運びやすい教材を準備しましょう。薄いテキストはもちろんのこと、分厚い教材を科目ごとに切断して、携帯している受験生もいるくらいです。
資格スクールはWebサービスを提供しています。スマホを使った動画視聴やテキストの閲覧、問題演習、スケジュール管理が可能になります。
集中できる環境を作る
勉強せざるを得ない状況を作れば、学習時間を確保できます。誘惑を遮断しましょう。
自宅で集中するのが難しいなら、以下のような環境で勉強するのがおすすめです。
- 公園
- 電車
- 図書館
- ホテル
- 静かな飲食店
- 資格スクールの自習室
社労士試験の直前になると、ホテルに勉強道具を持ち込んで一人合宿をする受験生もいます。
早朝に勉強したり、スマホの通知をオフにしたりすると集中しやすいです。
社労士試験の勉強時間を簡単に記録する方法
社労士試験の勉強時間を簡単に記録する方法をご紹介します。スマホアプリを使うと便利です。
「Studyplus」(スタディプラス)というスマホアプリなら、1日の学習時間を自動で集計できます。
使い方は、アプリに搭載されているストップウォッチで勉強時間を計るだけ。以下の機能が無料で使えます。
- 目標を設定
- 学習を記録
- 勉強時間をグラフで可視化
勉強時間を記録することは、モチベーションの維持や自信につながります。簡単にできるので、実践するようにしましょう。
Studyplus(スタディプラス)
勉強時間・学習内容を、教材別に記録することができるスマホアプリです。
- iPhone:対応
- Android:対応
- 料金:無料(アプリ内に一部課金の対象あり)
公式サイト >> Studyplus
最短の勉強時間で社労士試験に合格しよう
社労士試験に合格するための勉強時間は、800〜1,000時間。標準的な学習期間は半年〜1年間といわれています。
800〜1,000時間は、知識ゼロから学習を始めて、合格レベルに到達するまでの勉強時間の目安です。
不合格になった場合は知識を維持するために、翌年も800〜1,000時間程度の学習が必要になるケースがあります。
以下の方法で学習にかかる負担を減らして、勉強時間を短縮しましょう。
- 理解する
- 基本を完璧にする
- 過去問を中心に勉強をする
- よくでるポイントに絞る
- 科目ごとにメリハリをつける
- 横断整理をして覚える
- 資格スクールを活用する
クオリティの高い勉強を積み重ねれば、合格の可能性はぐんぐん上がっていきます。
勉強時間を確保する工夫をして、社労士試験に一発で合格しましょう。
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