健康保険法の覚え方【社労士試験で8割得点したい科目の攻略ポイント】

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健康保険は会社員などの被用者向けの医療保険です。

健康保険法はケガや病気、死亡、出産のときに行われる保険給付を定めています。「病院で保険証を提示すると自己負担が3割」になるのが健康保険の代表的な保険給付です。

健康保険法は厚生年金保険法との共通点が多い法律。健康保険法を理解できていないと、厚生年金保険法でつまずいてしまいます。

次の5つのポイントを押さえて学習しましょう。

社労士試験｜健康保険法の目的

健康保険法は1922年(大正11年)に制定された、日本でもっとも古い医療保険です。目的は、労働者やその扶養する家族の業務災害以外の病気やケガ、死亡または出産に関して、保険給付を行うこと。

健康保険法のポイントは以下の4つです。

自営業者が加入する医療保険は健康保険ではなく、国民健康保険になります。

業務災害や通勤災害による病気やケガ、死亡の場合は、労災保険法で保険給付を行います。労災保険法には、出産に対する給付と被扶養者に関する給付はありません。

健康保険法の保険給付の対象をまとめると以下のとおりです。

>> 試験の全体像をこちら

社労士試験｜健康保険法の点数配分と出題傾向

健康保険法の概要を次の2つの視点から解説します。

点数配分

社労士試験の健康保険法の点数配分は以下になります。

	健康保険法
選択式 試験	5点 (5空欄)
択一式 試験	10点 (10問)

満点は選択式で5点、択一式10点です。

健康保険法の合格基準点は次のとおり。

試験の問題が難しく受験者の点数が低い科目は、合格基準点の引き下げ(救済措置)が行われる場合があります。

試験の全体に占める、健康保険法の点数の割合は以下になります。

	割合	健康保険法の点数	総点数
選択式 試験	12.5%	5点	40点
択一式 試験	14.3%	10点	70点

過去5年間の出題

社労士試験における、健康保険法の直近5年間の出題は次のとおりです。

多く出題されている項目は「総則、保険者、被保険者、被扶養者」「標準報酬月額、標準賞与額」「届出等、保険者の行う事業」「費用の負担」の4つ。

	2019年	2020年	2021年	2022年	2023年
総則、保険者、被保険者、被扶養者	択一⑤	択一⑨	択一⑥	選択 択一⑥	選択 択一⑥
標準報酬月額、標準賞与額	選択 択一⑤	択一①	選択 択一③	択一❶ 択一③	択一③
届出等、保険者の行う事業	択一③	選択 択一③	択一①	選択 択一⑤	択一①
保険医又は保険薬剤師、保険医療機関等	択一②	選択 択一①	択一③		択一①
療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費	択一②	選択 択一②	択一①	択一②	択一④
保険外併用療養費、療養費	択一②	択一②	択一②	選択 択一①	択一①
訪問看護療養費、移送費	択一①	択一①	択一①	択一②	択一①
家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費
高額療養費、高額介護合算療養費	択一②	選択 択一②			選択 択一③
傷病手当金	選択 択一②	択一③	択一①	択一②	択一②
死亡に関する保険給付	択一①	択一①		択一①	択一①
出産に関する保険給付		択一①	択一②	択一①	選択 択一①
資格喪失後の保険給付	択一①	択一②	択一②	択一②	択一①
通則	択一②	択一①	択一②	択一④	択一①
日雇特例被保険者	択一①	択一①	択一①	択一①	択一①
費用の負担	選択 択一⑤	択一⑦	選択 択一④	択一③	択一③
不服申立てその他	択一①	選択	択一④	択一②	択一②

全範囲から満遍なく出題されています。健康保険法を攻略するには、すべての項目をバランスよく学習し、弱点をつくらないことが重要です。

>> 合格基準点を超えるための択一式・選択式対策

社労士試験の健康保険法を攻略するための覚え方

社労士試験の健康保険法を攻略する方法を、2つに分けて解説します。

全体

健康保険法の難易度と学習にかけるべき時間の比重度、法改正の多少は次の通りです。

	健康保険法
難易度	(4.0 / 5.0)
学習時間の比重度	(5.0 / 5.0)
法律の改正	多い

社労士試験の健康保険法の難易度は「やや難しい」。配点が高く、厚生年金保険法との共通事項も多いため、理解できるまで時間をかけて学習しましょう。

財源の問題から、法改正が多いです。法改正があった論点は出題される確率が上がります。確実に得点しましょう。

近年は通達を根拠にする問題が増えているため、健康保険法の難易度が上がっています。

とはいえ、基本事項を理解していれば、ほとんどの問題は得点できるレベル。配点が高い健康保険法で得点を稼がなければ、社労士試験に合格できません。

次の5つのポイントを押さえて学習しましょう。(↓クリックすると各項目にジャンプします。)

>> 学習スケジュールの詳細はこちら

保険給付の全体像をつかむ

社労士試験の健康保険法を学習する際は、まず保険給付の全体像をつかみましょう。

健康保険法には、全部で20の保険給付があります。似ている名称の保険給付もあるため、意識せずに勉強していると、どれがどの規定かわからなくなってしまうことも。

健康保険法の保険給付は、全体図を見ながら学習するのがおすすめです。

全体図を使って、覚えようとしている保険給付を指差しながら学習すると迷子にならずに済みます。ほかの保険給付も一緒に頭に入るので、一石二鳥です。

20もある保険給付を文字だけで覚えるのは大変です。健康保険法を勉強するときは保険給付の全体図を横に置いて、イメージ情報として覚えましょう。

覚え方はこちら >> すぐに実践できる暗記方法10選

過去問を重視する

健康保険法の対策として、社労士試験で過去に出題された問題を繰り返し解きましょう。再び出題される可能性が高いからです。以下は実際に、試験で出された問題です。

保険者は、偽りその他不正の行為により保険給付を受け、又は受けようとした者に対して、6か月以内の期間を定め、その者に支給すべき療養費の全部又は一部を支給しない旨の決定をすることができるが、偽りその他不正の行為があった日から3年を経過したときは、この限りではない。

2018年 択一式試験 健康保険法 問6D

保険者は、偽りその他不正の行為により保険給付を受け、又は受けようとした者に対して、6か月以内の期間を定め、その者に支給すべき傷病手当金又は出産手当金の全部又は一部を支給しない旨の決定をすることができるが、その決定は保険者が不正の事実を知った時以後の将来においてのみ決定すべきであるとされている。

2020年 択一式試験 健康保険法 問6B

上記の2つの問題はどちらも、健康保険法の「保険給付の制限」について問われています。短期間のうちに、同じ論点の問題が出題されているのです。

社労士試験は元々、過去問をアレンジした問題がよく出ます。その中でも健康保険法は、過去問の類似問題が多く出題される傾向にあります。

過去問の周辺知識を覚えるには、テキストを使います。過去問を解いたあとにテキストを開いて、論点の該当箇所とその前後の内容も確認します。「保険給付の制限」の場合は以下の画像のように、前後の記述も一緒に読みましょう。

法改正の対策をする

健康保険法は国家財政の問題で、法律の改正が頻繁に行われています。社労士試験では法改正があった箇所は、出題される可能性が一気にアップ。特に、過去に出題された箇所の改正点は要注意です。

以下は2021年に改正が行われ、2022年の本試験で出題された「夫婦共同の場合における被扶養者の認定」に関する問題です。↓

法改正があった論点は、出題されやすいことがわかります。

改正があった箇所をインターネット等で調べることも可能ですが、試験で出題される可能性のある法律は30以上。自分で調べると、かなりの手間がかかります。

法改正の教材は5月頃からリリースされます。

社労士試験に合格するには法改正の対策が必須です。健康保険法の法改正の学習は早めに取りかかりましょう。

詳細はこちら >> 法改正を得点源にする方法

横断整理で覚える

社労士試験の健康保険法は、横断整理をして覚えましょう。横断整理とは法律の枠を超えて、複数の法律を比較しながら共通点や相違点を認識していくこと。

健康保険法は厚生年金保険法との共通点が多いです。以下は「被保険者」に関する届出をまとめた一覧表です。

	健保法	厚年法
被保険者資格取得届	5日以内
被保険者資格喪失届	5日以内
賞与額の届出	5日以内
任意継続被保険者の個人番号 氏名・住所変更届	5日以内	規定なし
70歳以上の者に係る該当 不該当届	規定なし	5日以内
報酬月額の届出	7月10日まで
報酬月額変更届	速やかに
被保険者の個人番号 氏名・住所変更届	遅滞なく	速やかに

健康保険法と厚生年金保険法を比較しながら、2つの法律の相違点を覚えるほうがラクに記憶できます。違いを意識する分、頭の中で知識がゴチャゴチャにならずに済みます。

健康保険法と厚生年金保険法の学習を一通り終えたら横断整理を始めましょう。正確かつ効率的に記憶できます。

詳細はこちら >> 横断整理をすると覚えるのがラク

語呂合わせを活用する

社労士試験の健康保険法の論点を覚えるときは、語呂合わせ(ゴロ)を活用しましょう。

健康保険法は問題数が多い分、大量の暗記が必要になります。ゴロは紛らわしい箇所や、数字を覚えるのに効果的です。

以下は私が作った健康保険法に関するゴロです。

先進治験を評価した

先進医療、医薬品の治験にかかる診療、医療機器の治験にかかる診療等は評価療養とされる

病床200を選定した

ほかの病院からの文章による紹介がある場合および緊急その他やむを得ない場合を除き、200床以上の病院の初診は選定療養となる

移送費は医師しか(歯科)いらない

移送費の支給を受けようとする者は、移送を必要と認めた理由等を記載した医師または歯科医師の氏名を記載した意見書を添付して、移送費の支給申請書を保険者に提出しなければならない

頭の中でゴロのフレーズが響けば、論点を正確に思い出すことができます。遊び感覚で覚えられるので、気分転換にも。

社労士試験の語呂合わせ専用教材は市販されています。ゴロをうまく活用して、楽しく効果的に学習しましょう。

>> 語呂合わせのやり方はこちら

項目ごと

社労士試験に出題される、健康保険法の項目ごとの攻略ポイントは以下になります。

総則

健康保険法の目的と理念で構成されている。第1条の目的条文と第2条の基本理念は、選択式で出題される可能性があるため確実に覚える。

保険者・被保険者・被扶養者

健康保険の運営元である保険者、加入者である被保険者とその被扶養者の定義がまとめられている。よく出題される項目。被保険者は厚生年金保険法と共通点が多い。保険者の定義、健康保険組合の設立、適用事業所、当然被保険者、被保険者の適用除外、任意継続被保険者、被扶養者の範囲について理解する。

標準報酬月額・標準賞与額

健康保険のお金の単位。保険料を決定する際の基になるもの。報酬と賞与の定義、標準報酬月額の最高等級の改定、標準報酬月額の決定・改定、任意継続被保険者の標準報酬月額、標準賞与額の決定を覚える。

届出等

「いつまでに」「だれに」「なにを」を意識して覚える。事業主による届出、事業主による書類の保存期間、被保険者の届出を押さえる。

保険医・保険薬剤師・保険医療機関等

医師や薬剤師の登録、病院等の指定に関する規定。保険医・保険薬剤師の登録と抹消、保険医療機関・保険薬局の指定と更新の手順を覚える。

療養の給付・入院時食事療養費・入院時生活療養費

治療を受けたり、入院したりしたときの保険給付。療養の給付の範囲と一部負担金の割合、入院時食事療養費・入院時生活療養費の支給要件と負担額を押さえる。

保険外併用療養費・療養費

保険対象外の治療を併せて受けた場合や、やむを得ず療養の給付等を受けることができなかったときに支給される保険給付。保険外併用療養費・療養費の支給要件と額を覚える。

訪問看護療養費・移送費

訪問看護を受けた場合や、緊急に移送されたときに支給される保険給付。訪問看護療養費・移送費の支給要件と額を記憶する。

家族療養費・家族訪問看護療養費・家族移送費

被扶養者が療養や訪問看護を受けたり、移送されたりしたときに支給される保険給付。家族療養費・家族訪問看護療養費・家族移送費の支給要件と額を覚える。

高額療養費・高額介護合算療養費

一部負担金等の額が一定基準を超えた場合に支給される保険給付。高額療養費の支給要件、世帯全体の療養にかかる高額療養費、高額療養費の多数回該当、特定疾病患者の高額療養費、高額介護合算療養費の支給要件を理解する。

傷病手当金

療養中の生活費。傷病手当金の支給要件と額、支給期間、出産手当金との調整を押さえる。

死亡に関する保険給付

被保険者や被扶養者や死亡したときの保険給付。埋葬料、埋葬費、家族埋葬料の違いを認識する。

出産に関する保険給付

被保険者や被扶養者が出産したときの保険給付。出産育児一時金の額、出産手当金の支給日数と報酬との調整、家族出産育児一時金の支給対象者について覚える。

資格喪失後の保険給付

会社をやめた後も一定の要件を満たした場合に継続される保険給付についてまとめられている。傷病手当金と出産手当金の継続給付、資格喪失後の死亡に関する給付と資格喪失後の出産育児一時金について理解する。

通則

損害賠償請求権や不正利得の徴収、受給権の保護等がまとめられている。労働者災害補償保険法の規定とほとんど同じ。他の法令による保険給付との調整、給付制限を押さえる。

日雇特例被保険者

日雇労働者に対する保険給付がまとめられている。日雇特例被保険者の保険者、当然被保険者との保険給付の違い(特別療養費)を理解する。

費用の負担

国庫負担、保険料等が規定されている。療養の給付および前期高齢者納付金にかかる国庫補助、保険料、育児休業等期間中の保険料の免除、産前産後休業期間中の保険料の免除、一般保険料率、保険料の負担および納付義務、保険料の納付期日、保険料の繰上げ徴収、保険料等の督促および滞納処分、延滞金の規定を覚える。

不服申立てその他

標準報酬や保険給付などの処分に対し、不服がある場合の審査請求のやり方等が定められている。保険料と保険給付の時効の起算日を覚える。

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健康保険法の覚え方をつかんで8割以上得点しよう

健康保険法は厚生年金保険法と共通点の多い法律です。厚生年金保険法を理解するためにも、被保険者の定義と標準報酬月額は確実に理解しましょう。

社労士試験の健康保険法を覚える際のポイントは以下の5つです。

健康保険法は択一式試験の出題数が10問と最多です。得点を稼がないといけない科目なので、じっくり時間をかけて勉強し、8割以上の得点を目指してください。

>> 得点を取りにいく国民年金法の攻略法